初めての赤羽

 

 

夏の休日、7時半。いつものように物語を理解してないまま

朝ドラをボーっと眺めて、冷めたコーヒーをクイっと流し込む。

 

アプリのログインボーナスだけもらって、9時からはDAWを開く。

今日はジョセリンブラウンのサンプリングでいってみよう。

フィールソーグッドな声量の彼女の声とピアノ、サックスをチョップして並べ替える。

 

夏のお知らせ。

 

ヤベェ、なんかいい感じになってきた。

昼飯も忘れるくらいにどんどん打ち込む。

エレピは人一倍ベロシティ気にしないとダメだな。

ベースもサイドチェーンかけてノリを…とやってる。

 

ああ、とてもいいテンションだ。

昼飯もサッと冷やし中華をとって、いい夏の休日だ。

あれだな。プールでも行くか!!

 

先輩(ニート)を市民プールに誘う。

本当は自分の地元の施設行こうと思ったのだが、

なんやかんやで赤羽に行くことになった。

電車を乗り継いで35分。ゴーグルとキャップとバスタオルをカバンにしたためて

赤羽に向かう俺、もう直ぐ25歳。

 

赤羽の市民プールはなかなか珍しく、ウォータースライダーと

流れるプールが存在する。500円で2時間。うん、この値段設定がたまらない。

 

駅前で買ったおニューの水着に着替えて、早速流れるプールにつかる。

優しい水温が心地よい。久しぶりに水中に顔を沈めると

思ったより鼻に水が入ってくる。数年ぶりの水中の感覚。

はしゃぐ小学生に混ざりながら、「どういう風に泳いでたっけな」と考える。

 

流れるプールの内側にある25メートルプールでいよいよ泳ぐ。

まずは平泳ぎ、クロール、適当なところで顔を上げて息を吸う。

肩を回して水を掻き出す。

 

何これ、めっちゃ疲れんねんけど。

思わず関西弁。

自慢できるほどじゃないけど、4年くらいスイミングスクールに通っていたので

泳ぎは一通りできるし、クラスも一応一番上のところまで行って

100メートル個人メドレーもやったりしていた。タイムは普通だったけど。

「毎週アホみたいに泳がせやがって、これ一体何キロやらされとんねん」と思って

ひっそり1人で数えたら1キロ泳いでることがわかって、数えたことを後悔した。

 

そんな思い出が美化されて「まぁ1キロは泳ぎたいッスよね」なんて

大口叩いていた私は、50メートル泳いだ時点で

「これ、1キロ無理ッスね。」と思いをすり替えていた。

お腹のぜい肉を見れば、自分が諦めを覚えた大人になっていたことは一目瞭然だった。

 

言い訳の語彙ばかり増えて、適当に立ち振舞って、

そんなん、男の子じゃないやん!!!やれ!!俺!!!

俺は遮二無二500メートル泳いだ。

窓から差し込む西日で水面がオレンジ色にキラキラ光っている。時計は18時。

もうビールが飲みたくてたまらなかったので、出た。

 

 

 

赤羽は言わずと知れた飲屋街。駅前の商店街をくぐれば、一気にモードは変わってくる。

大量の酒場がひしめきあい、客を取り合っている。

外のテーブルではサラリーマンたちが騒いだり、ヤニ吸ったり、でかいジョッキの酒をあおっている。

言うなればこの飲屋街は、プールに入る前に強制的に浸かるシャワーや塩素水に似ている。

埼玉の家に帰る前に愚痴や不満はここで落としていこう。みたいな。

歌舞伎町や渋谷の繁華街とは全く違う雰囲気。余計な要素がない。

はは〜ん…これが北区か!!!と思った。

 

 1軒目は九州料理の居酒屋、陽が落ちてきていたので外のテーブルも気持ちいい。

 ビールを2杯飲んで、馬刺し、鳥刺しを食らう。

 たてがみは赤身と一緒に食べるのか、なるほど。

 

孤独のグルメみたいなブログになってきたな。見たことないけど。

 

2軒目は1軒目で店員に聞いたお勧めの飲みどころへ。

2階のカウンター席で焼酎の水割りとホタルイカを食べる。

お通しはポテトサラダとナッツ。気が利いているじゃあないか。

 

実は、俺は飲む前に先輩にこんなことを言っていた。

「今日はプール行ってメシ食って、まあ軽く飲んで8時半くらいには帰ります。

ほらやっぱり、パーティーってのは酔っ払い過ぎる前に帰るのがベストだかんよ。

物足りないくらいがちょうどいいんだよ。」

 

そして8時半、すっかりテンションが上がった私は

先輩と一緒にガールズバールネス」の扉を開けていた。(バカだから)

 

U字のカウンターに座り、若い女の子が来る。

ここでは書けないくらい年下の女の子がタメ口で話しかけてくる。

なんだここは、年端もいかない娘っ子がこんな酔いどれ相手に

楽しくおしゃべりしてくれるのか?

 

パラダイス

 

純粋にそう思った。その後もコロコロと女の子が変わる。

人気ナンバーワンの子もついてくれた。

酒ヤケ気味の声と高いテンション、服装込みでラフな女の子。

これが赤羽ナンバーワンスタイル、感動。

ウーロンハイをあおって時間を忘れて話していたら、なんと終電の時間だった。

 

俺はさっき8時半がパーティーはどうのこうの言ってなかったっけか?

なぜこんな時間まで埼玉の玄関口の赤羽にいるんだっけ?

慌てて埼京線に乗ろうとするとなんと池袋止まり。

そんな埼京線あるあるに振り回されて御徒町経由でなんとか終電に間に合った。

 

 

そういえばガールズバーのお代、払ってないや。

翌朝、赤羽のおはす北の方角に向かって五体投地